THE BEAUTY SALON , NORTH HAIR
愛車にこだわりのカスタムを施すバイカーでもあるオーナーの、隠れ家的な美容室の計画である。「自分でもDIYしますよ」と語るオーナーは、休日にはスキーやスノーボード、バイク、キャンプと、いくつもの趣味を楽しんでいると聞いた。連絡先にあるバイクのアイコンからも、手を動かしながら自分の手で育てていくことへの強い愛着が感じられる。
「今使っているサロンも、ここは自分で作ったんですよ」そうした言葉を受け、本計画では完成された美容室を提供するのではなく、使いながら手を入れ、時間とともに育っていく場としてのあり方を提案した。誰かにすべてを委ねるのではなく、自ら関与し続けることで愛着が深まる空間。その考え方が、このプロジェクトの出発点となっている。
計画地は千葉駅北口。かつては薬局や自転車販売店が入居していた区画で、余計な装飾を持たないシンプルな整形空間は、まるでオーナーの構想を受け入れる準備が整っていたかのようであった。
「働くのは基本ひとり。たまに誰かが来るくらい。背が高いので、上部収納も活かしたい。プランはお任せで。」
店名は、立地に由来して「NORTH」。場所と名前だけが先に決まり、ロゴはこれからという状態から計画は進んだ。そこで、空間設計と併せてロゴデザインも提案している。お客様により良い施術を届け、より良いヘアスタイルで日々を過ごしてほしいというオーナーの思いと「NORTH」という名称を重ね合わせ、進むべき方向を示す羅針盤をモチーフとした、シンプルなロゴを設計した。
本計画のコンセプトは 「GROWTH LABO」。使いこむほどに愛着と味わいが増していく、素地と素材感を大切にした美容室である。
森のように有機的で優しい印象と、ラボのように機能的でシンプルな構成を併せ持つ空間を目指した。
素材は、WOOD、USED METAL、NEW METAL、WHITE、MORTARとし、過度な仕上げを避けながら、触感や経年変化を受け入れる構成とした。
ファサードは木を基調とし、柔らかな素材感と温かみのある表情を持たせている。シンメトリーに並ぶスクエアの窓が、少し気になる演出をしている。既存のサインボックスを活かしつつ、ワンポイントでサインを見せることで、控えめながらもスタイリッシュな印象を与えている。
内部は白とモルタルを基調に、明るさと清潔感を重視した。ミラーや目隠しを可動とすることで、使い始めてからの自由度を確保している。個室空間はファブリックによる仕切りとし、セット面と緩やかに区切ることで、それぞれの空間に広がりを感じられる構成とした。ファブリックのレイヤードによって視線の抜けや透明度を調整できる点も特徴である。
カットスペースでは、白をベースとした空間にブラケット照明を設え、シンプルな中にアクセントを与えた。壁面にはベースとなる金物を設置し、ミラーの移動や追加だけでなく、コートや荷物掛け、ディスプレイなど多様な使い方が可能となっている。最小限の造作によって、使い手の工夫を受け止める余白を残した。
完成をゴールとせず、使いながら更新されていくこと。このサロンは、オーナーの手と時間によって育てられていく「実験室」として、これからも変化を続けていく。
ARCHITECT: NOW
PROJECT TEAM: GEN SUZUKI,SAYOKO KUMAGAI
CONSTRUCTION: SANO TATEGU
Photo: YUKI SHIWA
YEAR: 2023









